2コーラス目冒頭の、「名も知らぬ友達よ」という詞に惹かれます。
戦争が落とすとても暗く深い影からは、幸いにも私たちは無縁ですが、それ故に私たちは戦争というものを実感できません。なにか遠い出来事、幻のようなものと感じます。
それに立ち向かうように「友達よ」という詞が、自分と同じ身体を持ち、自分と同じように希望を持ったり、挫折したりする人たちが、今まさに戦争という影の中に囚われているのだということをリアルに感じさせ、戦争というものをリアルに立ち上がらせます。
少年たちが武器を持たされ兵士として使われ、大好きなサッカーの試合をTVで観たという理由だけで殺される、この「ろくでもない世界」に、心を痛めながらも、TVもあるし、スマホも持っている、寒い時や暑い時にはエアコンがあり、好きなことができ、それなりに満ち足りている私たちは、「ろくでもない世界」のことを忘れ、日常生活を送ります。
そんな私たちを、山下達郎さんの力強い歌声は、「ろくでもない世界」に立ち向かわせます。「名も知らぬ友達」に思いを馳せさせます。
そしてこの曲が私たちを誘うのは、戦争反対という薄っぺらな主張へではなく、現実に目を背けたままの生は空っぽだという痛切な想いへです、そう私は感じます。